言語学から見た方言

方言(ほうげん)とは、あるひとつの言語の中の亜種・変種のことです。語彙(俚言など)、発音(訛、アクセントなど)、文法、表記法のいずれか、もしくはいくつかの面で、差異が見られます。差異の程度が別の言語までには広がっておらず同じ言語の変種と認められるものの、部分的に他の地域の言葉と異なった特徴を持つようになったものを方言と呼びます。それは言語は変化しやすいものなので、地域ごと、話者の集団ごとに必然的に多様化していく傾向があり、発音や語彙、文法に相違が生じるからです。また、方言には同一地域内にあって、社会階層の違いによって異なる変種もあるのです。

しかし、言語学には「言語とは、軍隊を持った方言のことだ」という譬えが存在します。「同語族・同語派・同語群の同系統の別の言語」なのか、「同一言語の中の方言」なのかを客観的に区別する方法はなく、言語と方言の違いは実際には、国境の有無などのような政治的な条件や正書法の有無などにより判別されています。

主にセルビア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナで話されるセルボクロアチア語は現在はセルビア語・クロアチア語・ボスニア語という相異なった3つの言語であると主張されています(セルボクロチア語版Wikipediaも三分割されている)。しかし、十数年前までひとつの言語で、各国・各地方の言葉は、使用する文字に違いはあっても同じ言葉であり、方言関係にあるとされてきました、

一方、ドイツ語は、大きく北部方言(低地ドイツ語)と共通語を擁する南部方言(高地ドイツ語)に分けられ、互いに通じないほど違うのです。ドイツ語北部方言とオランダ語では会話が可能でありながら、ドイツ語北部方言と同南部方言では会話が困難だという一見すると奇妙な現象が起こっています。しかし、北部方言もドイツ語です。ところが、このドイツ語の北部方言ときわめて近い関係(方言の変化が連続的なので、どこに境界があるのかわからないといわれる)にあるオランダの言葉はオランダ語として、別の言語とされるのです。

一般言語学(幻の名著)

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